噛めること、食べられることの幸せをもう一度。

症例供覧

当医院は正しいインプラント治療をするための外科手術を得意としています。すなわちインプラント治療を専門としない医院でインプラント体の埋入が困難、あるいは難しいとされる患者さんの治療するために多くの設備を整えました。手術写真に馴れない方は心の準備を!

インプラントを入れる骨が充分にある場合

歯を含め口腔内の清拭を行った後、必要な麻酔をします。麻酔が不充分であると術中に痛みが発生し計画した治療が出来なくなります。

この写真はインプラント体を埋入するために歯槽頂に切開を入れ粘膜骨膜弁を形成して歯槽骨を露出したところです。

インプラント床(インプラント体が埋入される穴)の形成:インプラント床の方向性や深さが計画通りなされているかを指示棒を使って確認します。

インプラント体の埋入:埋入方法には機械埋入と用手埋入がありますが、私はもっぱら用手埋入を選択しています。骨質が固い場合あらかじめタップを切り所定の深さまで埋入します。最終締めつけトルクは15〜35Ncmとします。

インプラント体埋入の完了:予定通りインプラント体の埋入が完了したところです。インプラント体の頸部まで歯槽骨中に入っています。

手術創の縫合:開いた粘膜骨膜弁を旧位に復し、緊密に縫合します。

インプラントを入れる骨が不足している場合

 歯科インプラントは骨のあるところにしか埋入できません。したがって骨量(インプラントを入れる骨の高径と幅径)がない場合、この部位にそれに見合う骨を作らなくてはなりません、これを骨造成(増生)と言います。通常、骨造成後4〜6ヶ月間待機してインプラント体を埋入歯ます。

少しだけ骨が不足している場合

 骨の足りない部分に人工骨,他家骨あるいはこれらを混ぜたものを漆喰のように盛り上げて不足している骨量を補います.

 20歳代の女性の患者さんです.取り外しの義歯は受け入れられない,ブリッジでは両隣在歯を削らなくてはならないという理由でインプラントを希望された患者さんです.上顎2番を抜歯後の歯槽骨(歯槽頂)は吸収し陥凹しています.術前のCT画像検査でもその不足は分かっていましたから,GBRを計画しました.

粘膜骨膜弁を形成して,歯槽骨を露出しインプラント体を埋入した直後の写真です.中央に見える金属色のものがインプラント体です.本来なら金属色が見えなくなるまで骨内に入れるのですが,歯槽骨頂の幅が足りないのでインプラント体の頸部が見えたままです.これでは長期の良好な経過が期待できません.

 骨の足りない部分に自家細片骨や代替骨を移植し,その上に遮蔽膜を張ります.遮蔽膜は完全に移植骨を覆う必要があります.完全に遮蔽することで繊維芽細胞の侵入を防ぎ,骨芽細胞の優勢な成長を誘導します.

 骨再生誘導療法(GBR)中の口腔内写真です.術前の歯槽頂部に比べて幅径が増加しているのが分かります.年各の裂開(哆開)もなく順調な治癒経過です.

 順調に3か月が過ぎ,このとき使用したのは非吸収性遮蔽膜であったので,膜を撤去するために粘膜骨膜弁を形成しました.最初の欠損部にはほど良い膨らみが見られます.ただ,この遮蔽膜は骨再生誘導において非常に良い性能を示しますが,取り扱いがやや難しいので,販売がされなくなりました.

 遮蔽膜を除去したところの写真です.術前の写真と比べてモリモリと骨が出来ています.少しでき過ぎという感じがします.例によってでき過ぎた骨を調整しインプラント体頸部の適正な部分まで露出します.通法に従って型をとり,上部構造を装着します.

 いくつかの上部構造作成過程を経てインプラント義歯の完成です.

 インプラント上部構造を装着して3年経過した口腔内写真です.歯肉の退縮もなく,歯肉色ともに左右差はありません.

 もしこの症例について上部構造作成過程の閲覧をご希望の方は,メールにてご連絡下さい.アップロードします.

中等度の歯槽骨の不足が見られる場合

 この程度の歯槽骨の不足となると,一般開業歯科ではインプラント治療を行うところは少ないようです.上顎洞底挙上術と自家骨による歯槽骨の造成術術のコンビネーションを必要とする様な症例です.

 50歳代前半の女性の患者さんです.義歯の不具合とその審美障害を訴えて,来院されました.左は初診時のX線写真ですが,今までの患者さんの歯科治療の苦闘のあとが見てとれます.

 口の中を時間をかけて診察し,レントゲンや研究用模型を作製して,まずは抜くべき歯を選択し,インプラントを埋入するには骨量の足りないところの骨造成術を行いました.具体的には左側(写真から見て)上顎洞底挙上術と歯槽骨への自家骨(皮質骨)移植です(赤矢印).

 術中写真です(閲覧注意).左側上顎洞底挙上術と下顎骨体外側皮質骨の移植が完了したところの写真です.この手術法を選択したのはいろいろな目的がありましたが,歯槽骨への自家骨移植を採用したのは将来的に歯冠・歯根比を天然歯に近づけた上部構造の装着が可能となるように配慮したからです.

 骨造成後の4か月の治癒期間を待ち,左側(写真から見て)上下顎にインプラント体の埋入を行いました.インプラント体埋入後さらに3か月待ち印象(型取り)をとって,レジン製の暫間上部構造の作製を始めます.

 左側のレジン製の暫間上部構造で噛み合わせを確保してから2か月後,右下顎のインプラント体の埋入手術をしました.左の写真はインプラント体埋入後,縫合したところです.この部位には歯槽骨量が充分にあったので左側に比べて容易でした.

 上の手術直後のエックス線写真を左に示します.3本埋入しそれぞれが平行性を保っています.この後同様に約3か月の治癒(骨統合)期間をおいて上部構造の作製にかかります.

 

 すべてのインプラント最終上部構造の装着が完了した時のエックス線写真です.これくらいの治療期間や外科的侵襲が及ぶインプラント治療になりますと,患者と術者のコミュニケーションと強い信頼関係が必要です.

 私自身が行った骨造成を必要とするインプラント治療症例は数多くあります.随時ご紹介をしていきたいと思っています.インプラント治療を行いたいがインプラントを埋入すべき骨がないといわれた方の中で,それでもインプラント治療を受けてみたいと考えられている患者さんの理解の一助になれば望外です.現在の関連学会(顎顔面インプラント学会,口腔インプラント学会など)の治療コンセンサスに基づいたセカンドオピニオンを提供いたします.ご相談下さい.

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