口腔がんと口腔癌,どう違うのでしょうか? 一般的にひらがなで書く ”がん” は悪性腫瘍すべてを指す事が多く,漢字で書く〝がん” はもう少し指す幅が狭く上皮成分由来の悪性腫瘍と言う事になります.口腔は歯以外は粘膜上皮で覆われているので口腔がんの9割が上皮由来の悪性腫瘍ですから、そのほとんどが漢字で書く〝癌"と言うものになります.そのほかに唾液腺から発生した”がん”もあり、その他いろんな組織から発生する”肉腫”という悪性腫瘍もときどき発生します。
かつて"がんもどき理論"と言うのがありました.最初から転移しないがんがというものがあって,こういうのは経過観察で良いと言うものでした.一方で大多数のがんの専門医たちは一般的にがんは大きくなるほど転移を含め悪性度は高くなりやすいとの意見を主張しています.理屈はどうあれ ”癌” でも ”がん” でも放置しておけば大きくなって最終的には宿主(患者)を死に追いやります.ですから原則として早期の発見と早期の治療が必要なのです.
口腔外科専門医の多くは病院勤務が多く一般開業医で口腔外科専門医の人はそれほど多くありませんが,開業医として診療している先生もいます.なかなか治らない口内炎が治らないのだけれども「勤めの関係上受診する時間がなかなかとれない」とか「病院は待ち時間が長いし初診の曜日が決まっている」など,日常的な都合で受診できない患者さんは多くいます.
このような理由で病院口腔外科にかかれない患者さんは,まずは開業口腔外科医に受診される事が早期の口腔がんを見つける方法です.
前の項と重複しますが,早期がんのうちに発見し適切な治療を受けることが重要です.手術を受けるにしても腫瘍が小さければ切除範囲も小さいので,手術後の機能障害は少なくて済みます.したがって生活の質(QOL) は高い状態で確保されます.がんを早く見つける,これが大事です.早く見つけるためには気軽にかかれる経験豊富な口腔外科医のいる開業医院を探しましょう.
日本の最近の統計では年間に,男性4,852例,女性4,217例が報告されており,それぞれ全体の悪性腫瘍の1.2%,1,1%を占めています.年齢調整罹患率は10万人あたり3.0人で年齢階級別罹患率のピークは男性80〜84歳,女性85歳で高齢者に発生しやすいと言われています.しかし若い年齢層にも数は少ないけれども発生します.
口腔がんは見やすい部位に発生しやすいので,早期発見が可能です.口腔がんの中で部位別で最も多いのが舌がんで,その約50パーセントを占めます.歯肉がんは次いで20~30%と多く上顎にも下顎にも発生します.
舌がん(右側).60歳代の男性です.
なかなか治らない口内炎と言う事で受診されました.視診・触診からでもすぐに舌がんと診断されます.
舌がん(左側).
義歯があわない,と言ってこられた患者さんです.周囲が堤防状に盛り上がっていて潰瘍はありますがひどい出血は見られません.この状態になるまで何か月もかかったと思います.
下顎歯肉がん(左側)
抜歯後の経過が思わしくない,と言うことで受診された患者さんです.視診・触診,簡単なエックス線写真で下顎歯肉がんと診断がつきます.